【株式投資の教科書】上場廃止後に株の価値はどうなる?

【株式投資の教科書】上場廃止後に株の価値はどうなる?

株式投資を始めたい人や初心者の方だけではなく、株式に興味はあるけど何も知らない、何もわからない人でもわかるように、株式の仕組みや言葉を紹介します。今回は上場廃止になった場合、株価がどのように変動するのか、持っている株式がどうなるのかなど、意外と知られていない事実を紹介します。

上場廃止ってなに?

上場廃止とは、証券取引所で株式の取引ができなくなることです。

上場が廃止になる条件は、証券取引所ごとに異なりますが、上場廃止になるケースは大きく分けて次の3つがあり、上場廃止の理由次第で株が紙くずにならない場合もあります。

  • ① 会社の倒産により上場廃止
  • ② 上場基準を保てずに上場廃止
  • ③ 会社申請による上場廃止

上場廃止になるケースごとに分析

上場廃止になるケースによって、株価の動向や株式の価値が変わってきます。ケースごとに紹介します。

① 会社の倒産により上場廃止

いわゆる会社が倒産するケースです。倒産してしまうと、会社自体がなくなるため、上場を維持することができません。しかし、基本的には上場を維持することはできないのですが、「会社更生法」や「民事再生法」という手助けを得ることで会社を存続することが可能なケースがあります。

「会社更生法」を申請する場合

裁判所が選任した管理人主導で再建が進められるので、倒産の当事者である会社の経営者が再建に関わることができません。そのため、経営責任を明確にされ、経営陣を総入れ替えを前提にした立て直しが進められます。また経営責任の明確化する際に株主も責任を負わされることも多く、「100%減資を伴う上場廃止」という形を取られ、株式の価値が「0円」、いわゆる「株が紙くずになる」になるケースが多くあります。(※100%減資に関しては後述)

2010年の事例で、JALが会社更生法を申請して上場廃止になりました。しかし「100%減資を伴う上場廃止」だったため、株式の価値は「0円」になりました。そのため、2012年JALが再上場した時に、上場廃止になった時のJAL株主には何の権利も得ることはできませんでした。

jal

「民事再生法」を申請する場合

会社主導で再建が進められるので、会社の経営者が倒産の当事者であっても、財政の処分や新しい融資先との取引まで進めることができます。そのため、倒産の当事者であった経営者が、引き続き会社の経営に携わることもできます。会社の内部を理解している人が再建を進めるため、ある程度スピード感を持って立て直しが進められます。

ただ、一つだけ大きな問題があります。債権者が民事再生法を申請することに納得していることが前提です。債務者となる会社の経営に問題があることが多々のため、債権者が民事再生法を許容することは難しいケースが多いようです。

2015年の事例で、スカイマークが民事再生法を申請して上場廃止になりました。スカイマークの第一債権者は、航空機を販売しているエアバスであったため、再建のスピードを最優先したため、民事再生法を許容しました。

スカイマーク

重要!100%減資と99%減資の違い

「100%減資」と「99%減資」とでは大きく違います。上述したように、100%減資の場合、株式の価値は「0円」になります。そして、大概の場合は「100%減資に伴う上場廃止」が選択されます。

では99%の場合はどうなのでしょうか。「99%減資」とは、資本金を100分の1に減少させることで、既存株主の権利と株主価値には影響はなく、時価総額が一定額以上あれば、上場は維持される可能性が高くあります。もちろん「99%減資」の後に、上場基準の時価総額を下回り、上場廃止になるケースもありますが、上場廃止になってもならなくても、株式の価値が「0円」になることはありません

  • 「100%減資に伴う上場廃止」は株式の価値が「0円」になる
  • 「99%減資に伴う上場廃止」は株式の価値が「0円」になることはない

② 上場基準を保てずに上場廃止

証券取引所ごとに上場の基準があります。その基準を満たすことができない場合、上場を維持することができません。ルールの一部を紹介します。

  • 売買高・時価総額・流通株式時価総額の基準を下回る
  • 報告内容の虚偽、報告義務の遅延
  • 会社の解散

経営破綻(※①)や完全子会社化(※③)以外で、上場基準を保てずに上場廃止になる場合、通常は会社自体がなくなるわけではなく、会社に一定の価値があると見なされます。そのため、上場廃止が決まっても、株式の価値は「0円」にはならず、ある程度の価値を維持したまま上場が廃止されます。

では上場廃止されても、株式を保有していればどうなるのでしょうか。

まず株主であることに変わりはないので、株式を売買することも可能ですが、証券取引所での株式の売買はできなくなります。簡単に株式を売買することができなくなるため、株式を売却したい時の手続きは非常に苦労します。また株式を保有していることより、配当金などは受け取ることができます。さらに再上場しても株主であることに変わりはありません。

  • 上場基準を保てずに上場廃止になった場合、株主としての権利は変わらないが、売却しにくくなる

2004年の事例で、西武鉄道は報告内容に虚偽の記載があったため、上場廃止処分をうけました。しかし会社が倒産するというわけではないので、株価はある程度の価値を維持して、490円という終値をつけて取引が終了しました。その後、再上場はまだしていないものの毎年5円の配当金を株主に提供し続けています。

③ 会社申請による上場廃止

いわゆる完全子会社化されるケースです。

完全子会社化する場合は、TOB(株式公開買い付け)等を利用して親会社に株式を買い取ったり、新しい会社の株と交換になったりと、どんなに頑張って抵抗したところで、最終的に親会社に現金と交換することがほとんどのようです。そのため、株式の価値が「0円」になることは通常はありません。ちなみにTOBの場合、逆に株価が上がったりします。

2011年の事例で、三洋電機はパナソニックのTOBにより、完全子会社となりました。上場廃止後、三洋電機の株式を持っていた株主は、パナソニックの株式と交換されることになりました。

三洋電機

まとめ

  • 上場廃止になるケース
    • ① 会社の倒産により上場廃止
    • ② 上場基準を保てずに上場廃止
    • ③ 会社申請による上場廃止
  • 株式の価値が「0円」になるケース
    • 会社の倒産による、100%減資に伴う上場廃止の場合
  • 上場廃止後も会社が存在し、株式を持っているケース
    • 株主の権利は変わらないが、売却が非常に難しくなる

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