【株式投資の教科書】自己株式の処分と消却の違いを説明できる?
株式投資を始めたい人や初心者の方だけではなく、株式に興味はあるけど何も知らない、何もわからない人でもわかるように、株式の仕組みや言葉を紹介します。
今回は、企業が自社株買いで自己株式を取得した後、その自己株式を処分することと、消却することの違いを紹介します。
自己株式ってなに?
自己株式とは、企業が保有する自己の株式のことです。企業が自社株買いを実施することで、自己株式を取得します。
自社株買いを実施すれば株価が上がりやすくなるため、最近では株主への還元施策として実施する企業が多くなりました。自社株買いで株価が上がる理由は「「自社株買い」はなぜ株価の上昇につながるのか?」を参照ください。
自己株式はどうなるのか?
自社株買いを行った企業は、取得した自己株式をどのように扱っているのでしょうか。基本的には、企業が自社株買いで取得した自己株式はそのまま保有することが一般的です。
では、ずっと保有し続けるのでしょうか。
もちろん保有する企業もありますが、処理することもできます。処理の方法は2つあり、「処分」と「消却」があります。
自己株式の「処分」とは
自己株式の処分は、「企業が保有している自己株式を、発行済み株式に変更すること」です。
自社株買いにより、せっかく発行済み株式数を減少させ、株主還元施策を行ったというのに、発行済み株式に戻すということは、「自社株買いのリセット」をしているということになります。そのため、自己株式の処分は株価が下落にの要因になります。
- 自己株式の処分を行うと株価が下落する
①「自社株買い」の例
A社の純利益が1,000万円、発行済み株式数が100万株、株価が200円であったとします。そのA社が20万株の自社株買いを行ったとします。その時のEPS(1株当たり当期純利益)の変化を見てみましょう。
- 自社株買いする前
- EPS(1株当たり当期純利益):1,000万円 ÷ 100万株 = 10円
- 自己株式:0株
- 自社株買いした後
- EPS(1株当たり当期純利益):1,000万円 ÷ 80万株 = 12.5円
- 自己株式:20万株
このように自社株買いをすることでEPSが高くなり、株式指標を改善することができます。株式指標が改善することで、株価の上昇が見込めます。
②「自己株式の処分」の例
では、自己株式を処分するとどうなるのでしょうか。①の例の続きで見てみましょう。
- 自己株式を処分する前
- EPS(1株当たり当期純利益):1,000万円 ÷ 80万株 = 12.5円
- 自己株式:20万株
- 自己株式を処分した後
- EPS(1株当たり当期純利益):1,000万円 ÷ 100万株 = 10円
- 自己株式:0株
このように自己株式を処分することでEPSが低くなり、株式指標が悪化してしまいます。株式指標が悪化すれば、株価の下落につながります。
自己株式の「消却」とは
自己株式の消却は、「企業が自己株式を消し去ること」です。
自社株買いにより、発行済み株式数を自己株式に変更し、自己株式の消却により、自己株式を消去するため、発行済株式数が元に戻ることはありません。そのため、自己株式の消却により株価が下落するというったことはありません。むしろ「自己株式の処分」されるリスクがなくなるため、株主や投資家へは良い印象を与え、株価が上昇したりします。
- 自己株式の消却を行っても、株価が下落することはない
③「自社株買い」の例
自己株式の処分の例の①と同様です。A社の純利益が1,000万円、発行済み株式数が100万株、株価が200円であったとします。そのA社が20万株の自社株買いを行ったとします。
- 自社株買いする前
- EPS(1株当たり当期純利益):1,000万円 ÷ 100万株 = 10円
- 自己株式:0株
- 自社株買いした後
- EPS(1株当たり当期純利益):1,000万円 ÷ 80万株 = 12.5円
- 自己株式:20万株
④「自己株式の消却」の例
では、自己株式を消却するとどうなるのでしょうか。③の例の続きで見てみましょう。
- 自己株式を消却する前
- EPS(1株当たり当期純利益):1,000万円 ÷ 80万株 = 12.5円
- 自己株式:20万株
- 自己株式を消却した後
- EPS(1株当たり当期純利益):1,000万円 ÷ 80万株 = 12.5円
- 自己株式:0株
このように自己株式を消却してもEPSに変化はなく、自社株買いにより改善された株式指標を維持することができます。そのため、株価が下落することはありません。
まとめ
- 自己株式とは、企業が保有する自己の株式のこと
- 企業が自社株買いで取得した自己株式は、そのまま保有することが一般的
- 自己株式を保有する企業もあるが処理することもでき、処理の方法は「処分」と「消却」である
- 自己株式の処分は、企業が保有している自己株式を、発行済み株式に変更すること
- 自己株式の消却は、企業が自己株式を消し去ること
- 自己株式の処分を行うと株価が下落する
- 自己株式の消却を行っても、株価が下落することはない
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