【株式投資の教科書】意外と知られていない「日経平均株価」の計算方法
株式投資を始めたい人や初心者の方だけではなく、株式に興味はあるけど何も知らない、何もわからない人でもわかるように、株式の仕組みや言葉を紹介します。今回は、ニュースや新聞でよく耳にする「日経平均株価」の簡単な紹介、そして意外とあまり知られていない「計算方法」について紹介します。
日経平均株価とは
日経平均株価とは、東証一部上場している企業中から、日本経済新聞社が独自の基準で選んだ225銘柄の平均株価です。
日本の経済や景気動向を表す一つの指標として知られており、毎日の経済ニュースや新聞で必ず発表されていると言っても過言ではありません。1500を超える銘柄の中から選び抜かれた225銘柄はまぎれもなく日本を代表する一流企業であるため、安心して投資対象として検討できる企業と言えるでしょう。
また選び抜かれた225銘柄は、日本経済新聞により必要に応じて入れ替えを行っています。業績の良い企業は225銘柄に残りますが、業績が悪い企業は225銘柄から外されてしまい、225銘柄以外の業績の良い企業に入れ替えられてしまいます。このように常に225銘柄は日本を代表する一流企業で維持しています。
しかしこの日経平均株価も様々な問題をかかえており、とくに日経平均株価の計算方法を理解すればするほど、経済指標として最も有名なこの日経平均株価に対して、本当に信頼していいのかと疑問を抱くこと間違いないでしょう。
日経平均株価の計算方法
日経平均株価の算出方法は「225銘柄の株価合計を225で割って計算」として求めることが大前提であります。
しかし単純に株価を足し合わせると、株価は銘柄によって大きく異なるため、日経平均株価へ与える影響が株式銘柄によって大きく変わってしまいます。さらには日本経済新聞社225銘柄の一部を入れ替えた時には日経平均株価が大きく変動してしまったりするリスクがあります。
そういった問題を改善するために、計算式に微調整を加えています。微調整を加えた計算式は次になります。
- 日経平均株価 = (225銘柄のみなし額面で補正した株価の合計) ÷ 除数
- みなし額面で補正した株価 = 株価 × (50円 ÷ みなし額面)
みなし額面による補正
株価は銘柄によって大きく異なります。例えば、2017年の「第一生命ホールディングス」の株価は「2,000円」前後、「三菱UFJフィナンシャル・グループ」は「700円」前後と、それこそ3倍近く株価が離れています。どちらも金融セクターを代表する大企業ですが、このように株価の差は生じるのが普通です。
この場合単純に株価を平均してしまうと日経平均株価への影響は、「三菱UFJフィナンシャル・グループ」より、「第一生命ホールディングス」の方が3倍大きな影響を与えてしまいます。
- 日経平均へ与える影響が大きく異なる
- 単純な平均株価 = (2,000円 + 700円) ÷ 2 = 1,350円
- 「三菱UFJフィナンシャル・グループ」が10%株価が上がり「770円」になる
- 単純な平均株価 = (2,000円 + 770円) ÷ 2 = 1,385円 ※2.6%上昇
- 「第一生命ホールディングス」が10%株価が上がり「2,200円」になる
- 単純な平均株価 = (2,200円 + 700円) ÷ 2 = 1,450円 ※7.4%上昇
- 「三菱UFJフィナンシャル・グループ」が10%株価が上がり「770円」になる
なぜこのように株価に差が生じるのでしょうか。理由は2つあります。
- ①企業が成長して株価が上がった
- ②会社設立時の発行した株式の値段(株価)が異なる
①に関しては、企業の成長によって日経平均株価が上がったと同意になるため、日経平均株価へ大きな影響が出ても問題はありません。
②の場合は、ベースとなる会社設立時の株価、つまり初期の株価が大きく異なるため、初めから日経平均株価への影響に差があることになります。こういった場合は、補正が必要になります。ではどのように補正をするのか。
会社設立時の初期株価の差分補正に利用するのが「みなし額面」になります。
会社設立時の株価のことを「額面」と言いますが、2001年の商法改正に伴い、この額面が利用されなくなりました。現在利用していない「額面」の代わりに利用されているのが「みなし額面」です。利用されなくなった額面とみなして算出するため、「みなし額面」と呼ばれています。
225銘柄すべてに「みなし額面」が設定されています。昔からある企業の多くは額面が「50円」であったこともあり、「みなし額面」は「50円」がほとんどです。そのため「みなし額面」は「50円」が基準とされており、「みなし額面」が50円以外の銘柄の株価を50円に補正します。補正方法(計算方法)は次になります。
- みなし額面で補正した株価 = 株価 × (50円 ÷ みなし額面)
この補正方法を利用したら、「三菱UFJフィナンシャル・グループ」と「第一生命ホールディングス」の補正後の株価は次の表のようになり、補正後は「三菱UFJフィナンシャル・グループ」のほうが3.5倍も「みなし額面で補正した株価」が高く、より多くの影響を与えることがわかります。
銘柄 | みなし額面 | 株価 | みなし額面で補正した株価 |
---|---|---|---|
三菱UFJフィナンシャル・グループ | 50円 | 700円 | 700円 |
第一生命ホールディングス | 500円 | 2,000円 | 200円 |
除数による補正
選び抜かれた225銘柄は、日本経済新聞により必要に応じて入れ替えを行っています。しかしながら、入れ替える銘柄の株価が同じということはありません。225銘柄から外される企業は大概業績不振のため、株価が低くなっています。しかし、225銘柄に新しく選ばれる企業は業績が良いため、株価が高くなっています。
そのため225銘柄をただ入れ替えた場合、日経平均株価へ大きな影響が生じてしまいます。
例をあげて説明します。「みなし額面で補正した株価」が「1,000円の銘柄A」を225銘柄からはずし、「10,000円の銘柄B」を225銘柄に加えたとします。この場合、銘柄を入れ替えるだけで、日経平均株価が「9,000円 ÷ 225銘柄 = 40円」も上昇してしまいます。
銘柄を入れ替えた際に日経平均株価が上がることを防ぐため、「除数」を利用して補正しています。
どのように防ぐかというと、225銘柄の「みなし額面で補正した株価」の合計を割る値に補正を加えます。つまり日経平均株価の概念を作った当初は「225」で割っていた値を、225銘柄を入れ替えるたびに微調整して、日経平均株価が変わらないように補正しています。この微調整された割る値を「除数」と言います。
- 日経平均株価 = (225銘柄のみなし額面で補正した株価の合計) ÷ 除数
この「除数」が入れ替えが行われるたびに変更されていき、2017年8月では「26.581」という値になっています。一番最初が「225」という数値と思えば、だいぶ小さくなりました。株価(みなし額面で補正した株価)の高い銘柄に入れ替えが行われたため、どんどん小さくなってしまったということになります。
日経平均株価の計算方法のおさらい
計算式は次になり、株式会社設立時の株価の微調整を「みなし額面」で補正し、225銘柄入れ替え時の日経平均株価に与える影響を「除数」で補正しています。
- 日経平均株価 = (225銘柄のみなし額面で補正した株価の合計) ÷ 除数
- みなし額面で補正した株価 = 株価 × (50円 ÷ みなし額面)
この計算式を理解すれば、頭の良い人はある矛盾に気づくでしょう。その矛盾を考えれば考えるほど、「日経平均株価」はあてにならない指標なのではと疑問に思ってしまうはずです。どのような矛盾を抱えており、どのように捉えるべきかは「日経平均株価の大きな短所を理解しよう!」を参照ください。
まとめ
- 日経平均株価とは、東証一部上場している企業中から、日本経済新聞社が独自の基準で選んだ225銘柄の平均株価
- 会社設立時の初期株価の差分を「みなし額面」で補正している
- 銘柄を入れ替えた際に日経平均株価が上がることを防ぐため、「除数」を利用して補正している
- 計算式
- 日経平均株価 = (225銘柄のみなし額面で補正した株価の合計) ÷ 除数
- みなし額面で補正した株価 = 株価 × (50円 ÷ みなし額面)
- 日経平均株価 = (225銘柄のみなし額面で補正した株価の合計) ÷ 除数
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